…思い切り目を開く。息を止めていたかの様に苦しい。
肩で息をして、ようやく酸素があたしの脳を動かしてくれた気がした。
制服が汗で体にまとわりつく。嫌な汗だと感じる。
…夢。
「目、覚めた?」
その声と同時に、嗅覚が作動し始めた。お馴染みの煙の香り。まるでアロマの様に、あたしの全身をほぐす。
窓際に腰かけた裕太は、あの灰皿を片手に煙草を吸っていた。
その横顔、その姿を見て、あたしはこれ以上ないくらい安心する。体の震えは止まらないのに。
「…夢、見た」
「どんな?」
背筋が冷たい。自分の掌を見つめた。あの感触が、まだ。
「…裕太を殺す夢」
夢のなかで、あたしは確かに裕太を殺した。いや、殺したというよりも、その意思を持ったという方が正しい。
殺して、そして、あたしはどうするつもりだったのだろう。
自分も後を追うとは考えにくい。あたしが裕太の首筋に触れたのは、心中なんてドラマ的な感情からじゃなかった。
ただ、解放してあげたかったの。
裕太を、罪の世界から。
そして、あたし自身から。



