…小さな頃の裕太がいた。
あの赤い車を抱いて、泣いていた。
声を出さずに、静かに綺麗な涙を伝わせる。
その泣き方しかできない裕太が、可哀想で仕方なかった。
裕太の前に膝をつき、そっと手を伸ばす。
柔らかい髪の毛が、あたしの手に絡まった。
裕太があたしを見る。
その瞳は昔から、あたしを硬直させる作用を持っていた。
哀しい瞳。包み込む様に、視線はあたしを抱き締める。
髪の毛からそっと、首筋まで手を下げた。
裕太の細い首筋は、思った以上に冷たくて。
終わりのない苦しみなら、いっそこのまま。
…裕太の表情が、歪んだ。



