ホタル




……………

ドアは音をたてずに開いた。部屋は真っ暗で、電気をつけると明るさに目が眩んだ。

相変わらず殺風景な部屋。懐かしい灰皿が、窓際に置かれている。

裕太はまだ帰ってなかった。


今家には誰もいない。
静寂が妙にあたしを安心させる。

ただ静かに、ベッドに手を触れた。

裕太の体温は、残っていなかった。


…いつまで続けるのだろう。

いや、少し違う。そうじゃない。

いつまで、許されるだろう。

この、忌まわしい想いが。

「…好き」

呟いて、確かめる。呟いて浮かぶ顔が裕太である限り、あたしは呪われたままなのだ。

裕太の顔が浮かばない日は、永遠にこない気がした。


あたしは膝をつき、ゆっくりと目を閉じる。
ベッドに手を伸ばして、もう一度言葉を心に浮かべた。