…裕太が、あたしの頬に伝う涙に気付いてないわけがなかった。 それでも裕太は、あたしを抱くことをやめなかった。 時間にしたら短かったと思う。それでもあたしは、意識を失った。 「…ごめん、朱音」 本当に最後、意識を手放す直前に聞いた声は、まるで無音の中に響く葬送曲の様に、あたしの脳に哀しく響き渡る。 「俺じゃ駄目なことくらい、もうわかってるんだ」 その声は今まで聞いた中で一番諦念の色が強く、だからこそ一番、切なかった。