ホタル




……………

平岡君とのことは、誰にも言えなかった。平岡君も誰にも言っていないようだったので、文字通りあたし達は秘密の関係となる。

あの日からあたしは、当然の様に裕太を避け、当然の様に平岡君に抱かれた。

彼に抱かれた身体で、裕太に微笑みかけられるのが怖かった。



「…ねぇ…、俺のこと好き?」
「…っ…」
「何とか…言ってよ…っ」

ベッドが軋む。
その度にあたしは唇を噛み締める。

「目…開けろよ」

固く閉じた目のまま、あたしは首を振った。

見たくなかった。今の現実を。

「…っ、朱音…っ」


…平岡君との行為で、あたしは一度も感じることができなかった。