トンッと平岡君が近寄ってきた。肩が震える。視線が、反らせない。
「近親相姦」
「っ、違うっ!!」
思わず叫んだ。乾いていた喉が痛い。平岡君は少しだけ目を見開いて、それでも引き下がる事無く聞いてくる。
「違う?」
「あ…当たり前でしょ!?昨日は…ただ、用事があって…だって、裕太は…」
弟だし。そう言いたかったが、口が止まった。
「…裕太は?」
挑発する様な平岡君の口調。あたしは唇を噛み締める。
「否定してみてよ、朱音の口から。『裕太は弟だから』。『好きなんかじゃない』」
顔を上げる。口を開きかけて、そのまま固まった。
「どうしたの?」
平岡君の笑顔。あの頃の笑顔じゃない。冷たい視線が、あたしを突き刺す。
『裕太は弟だから』
『好きなんかじゃない』



