裕太が玄関を出たと同時に、あたしは思わず駆け出した。
普段は滅多に行かない向かいの邸宅。
遠慮なくその部屋のドアを開けて、壁際のタンスを漁った。
ここにあるはず。だってあたしは何度も見た。
両親の寝室。二番目のタンスの引き出しに、きちんと並べられている二冊の手帳。
少しだけ上がった息を整えながら、あたしはそれをそっと引き出す。
あたしと裕太の名前。誕生日も何もかも、正確に書き込まれてる。
父親の欄も、母親の欄も。
「…バカじゃん、」
はっと、乾いた笑いが口についた。バカじゃん、あたし。今更確認することなんか、何もないのに。
裕太とあたしは姉弟だって、そんなのもう決まりきってるのに。
二冊の母子手帖を持ったまま、あたしはその場に座り込んだ。



