ホタル



…それはひとつの、合図。

あたし達は、小さなキスをした。

あたしの唇は震えていて、それは本当にただ触れるだけのキスで。


再び雷が鳴ったけど、あたしの耳には届いていない。

台風も、雷も、何もかもがもうどうでもよかった。




あたし達は無我夢中で、お互いの唇を求めあった。

初めから、そう、初めから、あたし達の間には空気さえ必要なかった。

夢中で裕太の唇を求め、裕太もまた、あたしの唇を求める。

理性なんて初めから存在してない。あるのはただ、裕太が欲しいという欲求だけ。

ううん、裕太が欲しいわけじゃない。形はもう、どうだっていい。

…裕太とひとつになりたかった。
どこまで行っても赦されないあたし達なら、この夜の闇の中でだけは、どうかひとつに。


めちゃくちゃに抱きしめあいながら、裕太はあたしをベッドに押し倒す。
あたしも夢中で、裕太の背中に手を回した。

二人を隔てるもの、服も、空気も、汗でさえ、あたし達には邪魔だった。

雷鳴が響く。
誰もいない広い家には、あたしと裕太だけ。

二人の体温とお互いを呼ぶ声だけが、この家の中に存在していた。