…言ってしまったと、内心思った。
顔を見なくてもわかる。裕太は絶対戸惑ってる。
あたしはただ、小さく震える掌を見つめるしかなかった。
「…朱音」
裕太の声が届いた。顔を上げて、唇を噛み締めた、その瞬間だった。
大きな雷が窓の外で鳴り響いた。あたしは思わず肩をすくめる。
…一瞬、何が起きたかわからなかった。簡単に辺りは、闇に包まれた。
「…え?何…」
「停電だ…」
閉じた目を開いた。ゴウゴウという風の音以外に、何もない。辺りはただ、暗闇に支配されてた。
「朱音、大丈夫?」
「うそ…停電とか…」
「開けていい?」
裕太のその一言と、いきなり鳴り響いた雷があたしの中心を駆け抜けて、小さな叫び声と共に思わず立ち上がる。
と、暗闇にバランスを崩し、あたしは何かにぶつかってしまった。
「いた…っ」
「朱音!」



