「…変わって、ないのにな」
掌に裕太の声が響いた。
「あの頃と、気持ち…何も変わってないのに…朱音を好きだって思う気持ち、何も変わってないのに。なのに…今、朱音を抱きしめられない」
ポツリポツリと、呟く裕太。あたしは眉間にしわを寄せたまま、その言葉を拾い集める。
「あの頃とは…多分、違う。俺も朱音も、大人になって…好きだって気持ちを表す手段を、知ってる。それが…許されることなのか、そうじゃないことなのかも」
裕太の言う意味は、痛い程わかってた。わかってたからこそ、あたしは戸惑う。
許されないこと。そう、それは、許されないことなのだ。
あたしと、裕太の間には。
…でも。
「…裕太」
絞り出す様に呟く。
「…神様は、そんなに残酷かな?」
語尾が震えた。あたしは今、言ってはいけないことを言ってる。
「好きだって気持ち…表すことは、そんなにいけないのかな?神様は…それすら、許さないかな?…あたしは…」
固く、手を握りしめた。泣きそうになってることに気付く。
「…あたしは今、裕太に抱きしめられたいよ」



