ホタル


カチッとライターの音がした。多分、裕太は煙草を吸ってる。

「なん、で?部屋帰りなよ」
「だって、雷鳴ってるでしょ?」
「え?」

少しの沈黙。多分今、廊下には煙草の煙。

「1人じゃ怖いんだろ?大丈夫、ここにいるから」

裕太の声が、優しく、あたしの芯に響いた。
胸が苦しくて、締め付けられて、あたしは返事ができない。

…大丈夫だって言ったのに。
裕太には全部、ばれちゃうんだ。

「…うん」

素直じゃないあたしは、お礼を言うことも部屋に入っていいと言うこともできずに、ただそう呟いてベッドの側に腰かけた。

視線をドアに送る。

姿は見えないけど、裕太がそこにいる。

心臓が苦しくて、あたしは抱えた膝に半分顔を埋めた。