ホタル


「ふ、服を…」
『え?』
「服を、持ってきて欲しい…」

顔から火が出るとはこういうことなのだろう。さっき冷えた体が既に熱い。

一瞬沈黙があったが、すぐに裕太は状況を飲み込んだのかガタンと椅子から立つ音が聞こえた。

『どこにある?タンス?』
「だ、ダメッ!部屋入っちゃダメッ!」

思わずあたしは叫ぶ。部屋に入るくらいならいいが、裕太にタンスを開けられるなんて絶対に嫌だった。

そんなの恥ずかしすぎる。

『駄目って…じゃあどうするの?』

半ば呆れた溜め息と共に裕太が言った。あたしは決死の覚悟で口を開く。

「ゆ、裕太の服、貸して」

膝に顔を埋めながら、あたしは消えそうな声で呟いた。ヤバい、かなり恥ずかしい。

そんなあたしが見えてるはずないのに、少しの沈黙の後、裕太はふっと吹き出した。

「わ、笑わないでよ!」
『ごめ…、わかったわかった』

笑いを噛み殺す様にしながら、裕太は『スウェットでいい?』と聞いてくる。
あたしは小さく頷きながら、「うん」と呟いた。