「ごめん朱音、麦茶取って」
笑いながら裕太は、あたしの隣にあった麦茶を指差した。
「あ、はい」
少しだけ温くなった麦茶を裕太に渡す。「ありがと」と、裕太がそれを受け取る。
何てことない流れだった。何てことないはずなのに、あたしの心臓は思い切り跳ねる。
…裕太の指が、あたしの指に当たった。
ゴトンと音をたてて、麦茶がテーブルの上に落ちる。幸い蓋はしっかり閉まってたからこぼれることはなかった。
「ごっ、ごめ…っ!」
思わず立ち上がる。さすがに裕太も驚いた表情であたしを見た。
手の甲で口許を隠す。
鏡を見なくてもわかった。あたし今、絶対顔真っ赤だ。
「…朱音?」
「あっ、あたしお風呂入ってくるっ」
咄嗟にそう言って、あたしは急いでお風呂に向かった。早鐘の様な心臓が容赦なくあたしを襲う。



