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広いキッチンには、カチャカチャという食器の音と微かに響く外の豪雨、バラエティー番組の司会者の声が響いていた。
冷やし中華を食べながら、裕太は特に何を気にするわけでもなく「あ、このお笑いタレント何て名前だっけ」なんて呟いている。
そんな冷静な裕太と違って落ち着きのないあたしは、一人ドキドキしながら必死に冷やし中華を食べていた。
大好物なはずなのに、いまいち味がわからない。
「警報出たらしいよ」
「へ?」
不意に裕太があたしに言った。
「中川からメールきて。雷警報」
「…まじ?」
「まじ。朱音、大丈夫なの?」
微かに笑ってそう聞く裕太。大丈夫なわけない。あたしは雷が大の苦手なのだ。
「…平気」
「強がんなって」
「ほんとに大丈夫だもんっ!もう雷なんて怖がる年じゃないでしょっ」
強がってそう言ってみせるあたしに、裕太はくくっと笑いながら「はいはい」と答えた。その笑顔に、胸が締め付けられる。



