「帰ってたの?」
「うん、5時前くらいだったかな。台風来るからって、中川のお祖母ちゃんに帰された」
冷蔵庫からペットボトルの水を取りだし、慣れた手付きで片手で蓋をあけて飲む。
バタンと冷蔵庫の閉まる音と共に、裕太はペットボトルから口を離して言った。
「電話鳴ってなかった?」
「あ、うん。お母さんから」
「何て?」
「今日帰れないって。飛行機飛ばないみたい」
そこであたしはようやく自分が天気予報を見ようとしていたことを思い出した。リビングに入り、リモコンに手を伸ばす。
不意にタオルケットが目に入った。あたしはこんなの掛けて寝た覚えはない。
多分、裕太が。
「交通機関やられてるなぁ。それじゃまさみさんも、どのみち来れなかったな」
何気ない言葉だった。あまりにもサラリと言うからこっちもサラリと聞き流してしまいそうな程。
それでもあたしは聞き流せなかった。驚いて裕太に顔を向ける。



