「冷蔵庫に冷やしておきますから、適当な時間に食べて下さいね」
「うん、ありがと」
窓に目を向けた。さっきより雨が強くなってる。
「雨降りますねぇ」
キッチンから出てきた佐知子さんは、エプロンを自分の鞄にしまって言った。
「佐知子さん、今日は車?」
「いえ、今日は主人が車で通勤しましたので歩きです」
佐知子さんの家は、お手伝いさん達の中でも比較的家から近い。
運動のためと言いながら、たまに歩いて来るのだ。
チラッと時計に目をやった。針は丁度四時半を指す。
「佐知子さん、もうあがっていいよ」
「え?」
「ほら、雨も強くなってるし。どうせ今家にあたししかいないから」
でも…と渋ってる佐知子さんに、大丈夫だからと笑顔を向けた。
「じゃあ…お言葉に甘えて…」
「うん。気をつけて帰ってね」
申し訳なさそうにしながらも、佐知子さんは鞄に手を伸ばした。
どうせまさみさんは時間通りに来るし、家には本当にあたししかいないからしてもらうことも特にない。
丁寧にお辞儀をして、佐知子さんは雨の中帰路についた。



