ホタル




……………

うっすらと目を開けると、耳にバイブの音が届いた。
ぼんやりとした頭のまま、携帯を手に取る。

「…はい」
『朱音?』

…英里?

英里の声を聞いてようやく頭がはっきりしてきた。

ここはあたしの部屋だ。そして今、目が覚めた。

『ごめん、今日夜ご飯食べ行こって言ってたじゃん?あれ、ダメになっちゃった』

英里の話を聞きながら、んっと起き上がってカーテンを開けた。

湿っぽいと思った。
外はどしゃ降りとまではいかない程度の雨。

「それはいいけど…どうかした?」
『あのバカ修平が風邪ひいてさぁ。今家親いないから、外出れなくて…』
「あ~そりゃ仕方ないよ。修平君大丈夫?」
『大丈夫大丈夫。ただの夏風邪だし。バカは風邪ひかないっていうのにね~』

笑ってそう言い、今度埋め合わせするねと続けて、電話を切った。