ホタル




……………

少し人混みから離れた場所。裕太はあたしを軽々と引き上げ、「いいじゃんここ」と満足そうに呟いた。

お祭りの会場からは少し離れた場所だけど、見晴らしがいいので余裕で花火も見えるだろう。あたし達と同じ様な目的の人達も数人いた。

「いいね。よく見えそう」
「だろ?だと思ったんだ」
「よく見つけたね」

あたしが誉めると、裕太は落とす様な微笑みを返した。その笑顔に見とれた瞬間、裕太の顔が明るくなる。

思わず二人空を見上げた。夜空に鮮やかな花が咲く。

「うわぁー…」

予想以上だ。次々と上がる花火。それは見事な程に綺麗だった。

「綺麗だね」

しばらくして、裕太の方に向いて言った。裕太はあたしを見ている。

「うん」

裕太の笑顔が花火によって鮮やかに浮かび上がる。
吸い込まれる、その、雰囲気に。

「…綺麗だよ」

そっと唇を重ねた。
花火が二人を見下ろす。

花火が綺麗でよかった。誰もあたし達なんか見てない。
花火の美しさの影で、禁忌の花が咲いてるなんて。

いつものキス。体の力が入らなくなる。どうでもよくなる。
どうでもいい。罪も、罰も。

裕太がキスをしてくれるのなら。