…電車に乗るまで、地元の友達とは誰にも会わずにすんだ。電車も比較的空いていて、ボックス席に座ることができた。
30分も乗っていると次第にあたしみたいな浴衣の人達も増えてきて、今日がお祭りなのだと実感する。
「人、増えてきたね」
「うん」
囁く様に呟くと、裕太も軽く頷いた。あたしはしばらく裕太を見つめて、そして視線を窓に移す。
電車の中、ううん、家を出てから、裕太とは殆んど会話らしき会話をしていない。
初めは緊張して話せなかっただけだけど、裕太もそうだと思ってたけど、時間がたつにつれてそうじゃないことに気付いた。
裕太はわざと話してない気がする。あたしが話しかけても、簡単な返事だけ。
…あたし、何かしたかな。
そういえば浴衣についても何も言ってくれてない裕太に気付いて、でも気付かないふりをして、あたしは小さく目を閉じた。
楽しみにしてたのにな。初めての、デート。



