「本当にお車出さなくてもよろしいのですか?今日は旦那様も奥様もお帰りにならないので、渡瀬がおりますが…」 「ううん、いいの。裕太も行くみたいだから、一緒に電車で行く」 「裕太さんとお嬢様、本当に仲がよろしいですね」 巾着を持ってきてくれた梨華さんが満面の笑みで言った。笑顔を返しながらも、心臓が跳ねる。 心苦しくないと言ったら嘘だった。でも本当のことなんか絶対言えない。 あたしは巾着を受け取り、二人にお礼を言って部屋を後にした。 ……………