今日の花火、本当は友達と行くということにするつもりだった。でもどういう訳か、まさみさん達の間では彼と行くことになってしまっていた。
無理もない。あたしはまだ、平岡君と別れた事を言ってなかった。

言うチャンスはいくらでもあった。でも言えなかった。
多分心のどこかで、平岡君を利用していたのだと思う。彼と付き合ってると思っている間は、あたしと裕太のことがばれるなんて絶対にない。

最低だ、と思った。どこまでひどい女になれば気がすむんだ。


「はい、できましたよ」

ポンッと腰を叩かれて現実に戻った。梨華さんが目の前に鏡を持ってきてくれる。

アップにした髪に淡いメイク。大きな花柄の深紅の浴衣。

「ありがと」

鏡の中のあたしが微笑んで言った。赤色。裕太が昔から好きな色だ。