今度ははっきりと、自分の涙が流れた。雨に濡れた頬を、幾筋も涙が伝う。
汚染されたあたしは、もうどうにもならない。せめてこの毒が広がる前に。あたしを。
「要らないって言って…」
雨と涙と傘が邪魔で、裕太の顔が見えない。でもその方がいいかもしれない。
裕太の表情を見るのが、怖い。
「…要らないよ」
雨音を掻い潜って、裕太の声が届く。心臓が凍りつく。
「姉ちゃんなんていらない」
…望んだ答えだった。要らないと、否定されたいと望んでいた。
なのにどうして、こんなに胸が痛いの。
どうしよう、涙が止まらない。
「朱音が欲しい」
…一瞬、全ての音がやんだ。



