…パシャパシャと、水しぶきの音がした。ゆっくりと視線を前に送ると、そこには傘をさした裕太がいた。
駆けてくる、あたしのもとに。
ふいにあたしを包む雨が消え、代わりにパラパラと傘を叩く水しぶきの音が降り注いだ。ブランコに座るあたしの上に、裕太がさしていた傘があった。
一瞬で、裕太の体が雨に濡れる。
「…裕太」
肩で息をする裕太を見ながら、枯れそうな声で呟いた。
「濡れちゃうよ、裕太が」
「…自分の体見てみろよ」
「あたしは…これ以上濡れたって、何も変わらないもん」
何も変わらない。今更何も。
裕太はまだ間に合う。まだ、汚染されてないから。
だから。
「…嫌いって言って」
「…え?」
「嫌いって…要らないって言って」
『朱音ちゃんがいちばんすき』
「もうあたし…あなたのお姉ちゃんでいられないよ…。お願いだから…あたしを、突き放して」



