ホタル



キィッ、キィッ、…キィッ。ゆっくりとブランコを止める。目を閉じて耳を澄ますと、降り注ぐ雨の音があたしを包んだ。

…そうか、季節はもう梅雨だ。いつの間に、こんなに時間がたったのだろう。

顔を上げた。空から大量の涙が降っていた。これは空の涙?それとも、あたしの?

「…消して」

小さく呟く。
消して欲しい。この想いを、あたしごと全て。

平岡君を傷つけて、裕太を巻き込んで、あたしを縛り付けて。
そんな想い、何になるっていうの?


…振られることができたなら、どんなに楽だろう。
あたしにはそれすら赦されない。

どうせならいっそのこと、裕太に嫌われたい。嫌われて、いらないって言われたら、そしたら心置きなくいなくなれるのに。


…ねぇ裕太。それじゃダメ?
あたしもう、あなたのお姉ちゃんでいられる自信がないよ。
だったらいっそのこと…


「朱音っ!」


いっそのこと、あたしの全てを否定して。