ホタル



『…じゃあやっぱりやだ』
『何が?』
『朱音ちゃんはおねえちゃんなんかじゃないもん。僕ぜったいおねえちゃんなんてよばない。だから、いっしょにいて』

裕太の小さな手が、あたしの洋服の裾を握りしめた。あの頃の裕太にとって、多分あたしは全てだった。

『いいよ』
『ほんと?』
『うん。あたしがずっと、裕太の側にいてあげる』

小さな裕太をそっと抱き締めた。裕太の赤い車がゴツゴツしてて痛かった。『朱音ちゃんがいちばんすき』。嬉しそうな裕太の声も、鮮明に脳裏に焼き付いてる。