『…おねえちゃんだったら、ずっといっしょにいてくれるの?』
『え?』
『僕、朱音ちゃんがいちばんすき。ずっといっしょにいてくれるなら、おねえちゃんてよぶ』
裕太の表情が少し寂しそうだった。あたしにはよくわかってた。裕太の寂しさが、痛いほどに。
『…きょうだいはずっといっしょにいられないんだよ』
『なんで?』
『そういう決まりなの』
『だれがきめたの?』
『うんとえらい人』
『おとうさんより?』
『うん。もっともっとえらい人』
朧気ながらも知っていた。姉弟は結婚できない。今思えば裕太の『いっしょにいたい』はそういう意味じゃなかったのかもしれない。ただ単に、裕太の寂しい時に側にいて欲しいってだけだったのかもしれない。ううん、きっとそう。
それを考えると、あたしはあの頃から少しおかしかったんだと思う。裕太があたしに依存してたんじゃない。それ以上にあたしが、裕太に依存してたんだ。



