…こういう衝撃を表す言葉をあたしは知らない。走馬灯の様に情景が蘇る。
昼のラブホ前。いつもの様に別れたあの日。裕太とあたしの首元にあった、同じ赤いマークを。
「まぁ俺が言うことじゃないけどさ」
混乱したあたしの隣で裕太が言う。
「朱音、ちょっとふらふらしすぎじゃない?ちゃんと1人の人に決めた方がいいと思う」
『1人の人に決めた方がいいと思う』
「…まぁ俺には関係ないけど…今みたいに露骨に避けるのは止めてよね。なんかそういう…」
「…何で?」
消え入りそうな声。でも裕太には届いた。
「何で裕太がそんなこと言うの?」
「…え?」
「あたしが…あたしがいつ1人に決めてないって言った?そんなの裕太にわかるの?」
『俺には関係ないけど』
「裕太だって、やることやってんじゃん。あの年上の彼女が裕太の心に決めた1人だって言えるわけ?あのキスマークが裕太の1人だって言えるの?」
止まらない。防波堤が壊れた様に、感情があふれだす。



