「…そろそろ帰るよ」 そう言って帰り支度を始める平岡君を、あたしは引き留めたりはしなかった。ただ俯いて、「そうだね」と言うしかない。 …裕太に会わなかったんじゃない。あたしが、裕太を避けているんだ。だから必然的に、平岡君とも会わないできた。 平岡君との時間を増やし、裕太との時間を持たない様にしてるのに、どうして気持ちはその通りに動いてくれないの。 英里の言葉が、耳に痛い。 『それ、多分朱音も平岡君も傷つくよ』