初めてキスをしたのは、付き合いだして四日目の放課後だった。なんとなく、本当になんとなくだった。それでも別によかった。というより、早く先に進みたかった。あたしの悪い癖。"手を繋げば、キスをすれば、抱き合えば。"呪文の様に唱え続ける。そうすればきっと、本当に彼のことを好きになれる。きっと。
そっと唇を離し、小さくあたしを抱き寄せる。耳元で小さく「好きだよ」と呟く平岡君に、あたしはまだ小さな罪悪感を抱かずにはいられなかった。
早く消してしまいたい。
この罪悪感も、パンドラの箱も。
そのための手段だった。手を繋ぐことも、キスも、そして、それ以上も。
…彼の唇があたしの耳元からそっと首筋に降りてきた。あたしは小さく反応するが、同時に理性が働いた。
「…まって」
少し離れてから呟く。
「家の人、いるから」
咄嗟にあたしから離れて「あっ、ごめ…っ」と慌てた口調で呟く平岡君を見ながら、あたしは益々罪悪感に駆られた。
…好きになりたい。
この優しい人を。
「平岡君」
だからあたしは、先へ進みたい。
「ラブホ行く?」
…これは、間違ってる?
間違ってるの?
……………



