ホタル




……………

「やべ、西ん家ってめっちゃ金持ち?」

家の門の前で天を仰ぐ様に顔を上げる平岡君を見ながら、「父親が金持ちなだけだよ」と言った。
きょろきょろ辺りを見回す平岡君を連れて家へ入ると、まさみさんが出迎えてくれた。

「あらお嬢様、お帰りなさいませ。今日はお友達もご一緒で?」
「うん。紅茶ある?」
「はいはい、今準備致しましょう。すぐにお部屋にお持ちしましょうね」
「ありがと」

言葉通りまさみさんはすぐに紅茶とクッキーを持ってきてくれた。この間お父さんの仕事先の人が出張のお土産で買ってきてくれたイギリスのクッキーだ。手慣れた手つきでテーブルの上にそれらを並べ、「ごゆっくり」と笑顔を残してまさみさんは部屋を出た。
小さな沈黙の後、平岡君がはぁっと大きなため息をつく。