ホタル



傷つけるかもしれない、と思った。だからせめて、本当に平岡君を好きになろうと決めた。本当に、彼の望むままに。

できる、と、思った。







だって彼の声は、裕太に似てるから。


最低だけど、できると思った。








…目をつむり、もう一度固く鍵をかけた後、あたしは廊下を駆け出した。

真っ直ぐに、気持ちと逆方向に。







夏が来る。





全てを狂わす、夏が。










……………