「姫・・・」


「………」


『東の国の王子を打ち負かした後、白雪姫の居場所を聞いた西の国の王子は中央の塔の一番上にたどり着きました。』



紙の花で敷き詰められた棺のようなものの中で、横たわったままじっと出番を待つ私。



「………姫、どうか目を開けてください。
私に、その愛らしい笑みを浮かべ話しかけてください。」


練習では、恥ずかしがって太陽くんはなかなかここのあたりのセリフを言いたがらなかったんだけど、(言ったとしてもカミカミ。)実際目をつむっていてもドキドキするぐらい様になっている。



「………」



どきどき。

いよいよ、あのシーンだ。




「もし声がお聞かせくださらないというのなら、せめて口づけを送ることをお許しください。」




トン、と近くで膝をつく音がする。
そして顔に影がかかり、




おぉぉおおお!?


きゃー!!


え、まじでちゅーすんのかな!?



ざわっと急に観客席は騒ぎ始める。



(ふ、フリだとしても緊張する……!)


もちろん、本当にキスをするわけではない。
口の横の、いったら頬にキスをする手はずになってるんだけど…。

それでも、太陽くんの吐息を感じたら緊張せずにはいられない。


「…………」


そうして、もうすぐだというところで。


「蕾、」


「!」


ふと名前を呼ばれて、思わず目を開けたら。
キラキラと、笑みを浮かべた太陽くんが目と鼻の先に。
そして、


金髪の王子様は私のおでこにキスをした。