次はいよいよ王子初登場シーンだ。
なんとかここまで無事演じきれたけれど、その時にちらりと視界に入ってきた光景には驚いた。
なんと、最前列から数列まで女子でいっぱいだったからだ。
たぶん、太陽くんと如月くんが見たいからだろう。
……なんだか、チリリと胸が焦げたように疼く。
私は振り切るようにして、足を踏み出した。
「お母様に頼まれて、森に来たけれど……小さな家はどこかしら?」
『白雪姫は、お后に小さな小屋から林檎をもらっておいでと言われて近くの森に来ておりました。
「………あら、きれいなお花。
お母様にプレゼントしましょう。」
身を屈んだ白雪姫。
しかし、その後ろには何と剣を持った兵士がおりました。
実は、お后様は怒りのあまり兵士に白雪姫を殺すように命じていたのです。
それを知らない白雪姫は、後ろに気づかず花を摘んでいます。
「危ない!」
長い長い剣が、白雪姫に向かって振り下ろされたその時。
なんと王子様が現れたのです。』
キャァァァァアア!
太陽ー!!
相沢君かっこいぃーー!!
良いぞ太陽ー!やれー!!
ヒューヒュー!王子様ぁー!
太陽くんが登場した瞬間、会場が湧く。
頬を染めた女子の黄色い悲鳴に、にやにやと太陽くんを茶化す男子の声。
……やっぱり、太陽くんはすごいな。
なんて、劇中なのにもかかわらず考えてしまう。

