「ほーら、みんな蕾に釘づけだったじゃん」
舞台袖に入ったとたん、ニマニマとした茜ちゃんの笑みに迎えられる。
「え?」
「あーもう、これ以上蕾ファンとかいらないから。
そんなことしたら俺が……」
「?」
片や太陽くんはといえば、次もう出番だというのにブツブツと頭を抱えながらつぶやいている。
「あーいいからいいから。コイツなんかほっといて。
あ、次シーン始まるから行かないと。」
「あ、いってらっしゃい!」
いってきます、と意地悪な継母のように妖艶な笑みを浮かべ、舞台へと上がっていく茜ちゃんを見ていたら、
「あの、その、…蕾、」
「えっ?」
突然声をかけられて。
「かわいい。」
「………!」
ぼそっとつぶやかれた言葉に顔を真っ赤にした私と、同じくらい真っ赤にした太陽くんは
「ほらそこのばかっぷるー!次もうすぐだからはやくスタンバイしろ!」
との監督の声がかかるまでそのままだった。

