「あぁ、どうしよう。
またお母様に怒られちゃう。」
『白雪姫は大層美しい姫でありました。
ゆえに継母である女王からはいつも叱られてばかりです。』
ザワッ………
私が舞台に出たとたん、会場が喧騒に湧く。
みな驚きの表情を浮かべていたきがするけれどそれどころじゃない私は頭が真っ白になってしまう。
「…………っ、」
大勢の人の目、顔、
実際に目の当たりにすると、頭がくらくらしてセリフが口から止まってしまう。
次は、何のセリフだったっけ……
口がカラカラになって、セリフが思い出せなくて……
『大丈夫。』
ふと、さっきの優しい声が聞こえる。
あぁ、そうだ。
さっき励ましてもらったばかりなのに。
「早く食器を洗わないと、またすることが増えてしまうわ。」
太陽くんの声を思い出したと思うと、すんなりと次のセリフが口を出てくる。
そのあとは、落ち着きを取り戻して何とか次のシーン転換まで演じ切ることができた。

