"白雪姫"役になったということに頭がいっぱいだった私は、内容まで頭に入らなかったけれど。
白雪姫のストーリーは誰でも知っている。
その中で一番印象的なシーンは……最後の、キスシーン。
その場面がまだできていない、しかも江川さんは相当力を入れているようだし。
すごく高確率でこの悪い予感があたりそうで怖い。
「どうなるんだろうなー」
といいながら、ぱらぱらと台本を読む太陽くんにちらりと視線を向けてみるが、私と同じことはどうやら考えていないようで。
不意にこちらを見た太陽くんと目が合ってしまい、私は慌てて顔を下に向けた。
…顔が熱いよ。
「とにかくさ、ちょっと台本読もうよ。」
茜ちゃんの言葉に、私たちはできるだけ小さな声でセリフを読むことにした。

