「8番テーブルのお客様ー」
「あ、太陽、呼ばれてる」
「………はーい」
さも当たり前のように言ってのける茜ちゃんに太陽くんはか細い声を漏らして札を持って立ち上がる。
「あ、私行くよっ…?」
「いいよいいよっ、てか、こいつらめっちゃ頼んでるから量多いし。」
そう言って、私が立ち上がる前に太陽くんはカウンターへと向かって行く。
それを視線で追っていると、隣から茜ちゃんの声が聞こえてきた。
「………鬱陶しい」
「えっ?」
「あ、いや、別に蕾のことを言ってるんじゃなくて、周りの視線が痛いからさ。」
それはさっきから感じていた。
学校終わりの、乗換え駅の近くのファストフード店で学生服を着た人が大勢いるなかで太陽くんと如月君、そして茜ちゃんが入ったとたん視線が一斉に集まったのを感じて。
その中で一人、明らかに違う私は思わず身をすくめてしまったけれど、他の三人は全然様子が変わっていなかったから気付いていないのかと思っていたけれど、どうやら違うようだ。
「い、いつもこうなの?」
「そりゃ、こいつら連れてきたらいっつもだよ。」
はぁ、とため息をつく茜ちゃん。
……茜ちゃんにも視線が集まっているのは、どうやら本人には気付いていないらしい。

