ザワザワと騒がしい教室。
「ありがとう。
これから俺が言って行く役を黒板で書いていってほしいんだけど…。」
「うっ、うんっ。わかった……」
だけど、妙に色っぽい小声で囁いてきた太陽くんの声ははっきりと耳に伝わってきて。
………そ、そんな囁くように言わなくてもいいんじゃないかな。
なんて恨めしく考える。
「はいはーい。静かにー。
で、これから役決めていくから蕾が黒板書いていくの見て、自分がなりたい奴考えてー。」
それから、徐々に静かになっていくクラスで、私のカツカツというチョークの音と、太陽くんの声だけが響いて行く。
「……っと、このぐらいかな?
あ、ちなみに白雪姫は最後に決めるからよろしく。」
「…………」
なんで最後?という疑問が湧く前に、私は黒板の前でみんなよりも大きく見える黒板の字を凝視して悶々と考える。
やっぱり、私なんかが役をやるのは無理だし……。
小道具、とか衣裳係かなぁ……。
と、考えてちらりと茜ちゃんを見てみる。
出来れば、一緒にやりたいななんて考えるけど、きっと茜ちゃんは白雪姫をやるんだった、と勝手に思いなおす。
……もう一度ちらり、と茜ちゃんを見てみると眉間のしわはなくなっていて。
ひそかに安心していた。

