高露は莎羅の手を握った。莎羅の手は細く儚げだった。

「高露……」

弱々しい声で高露を呼ぶ。

「莎羅っ」

莎羅は髪が綺麗なのが自慢だった。その髪を高露は撫でる。

「ごめんね…」

赤く変色した莎羅の瞳を覗き込む。

「私……知ってたわ。高露は私に隠しているつもりだったと思うけど、私の病気の原因を調べるために飛び回っていたこと。そのために色んな人と関わりを持ってしまった事……でももうそんな事しなくてもいいのよ」
疲れるのか段々息が激しくなる。

「するよ!する!当たり前だろ?まだ原因も分らないじゃないか!目の色だって綺麗な黒目だったのに赤くなっちゃうし!」

「泣かないで…」
細い手で高露の頭を撫でる。

柔らかい髪。少し癖のある髪。大好きだった。


「泣く訳ないだろっ!そんな必要ないんだから!」
涙を拭う。

「好きよ…大好き」

莎羅は叱る様に言った。
「生きて……高露。死んでは駄目。私の分まで…私は幸せだったわ。貴方がいたから」
満足そうに微笑んで莎羅は目を閉じた。

「!莎羅!!!」
呼んでももう答えがあることを高露は分っていた。でも信じたくなかった。
莎羅の身体を揺らす。

しかし、もう返事がなかった……


爆発的に将来増え、人類を悩ましたASPHODEL−5(アスフォデルファイブ)の初期の患者だった……