煌びやかなイルミネーションで化粧された空木ヶ丘駅前の大噴水公園は、混雑していた。

主な原因は、帰宅ラッシュのサラリーマンや寄り道途中の学生達。


人々は忙しなく行き交い、時折百貨店の巨大スクリーンに映るアイドルを見上げては、白い息を吐き出している。


「ふぁ……そろそろ帰るか」


私はそういって、大噴水の縁から腰を上げた。

こんなに人が密集していても、やはり冬。

寒い事この上なくて、首に巻き付けたほつれがちなマフラーを口元まで引き上げた。


「寒すぎンだよ、日本列島」


寒さを愚痴って、転がってきた空き缶を蹴飛ばした。


と思ったら、その空き缶を誰かの足が止めた。


「ちょーちょー良くないっすよー、お姉サン。ゴミはゴミ箱でしょーフツー」


空缶を拾い上げたのは、どこにでもいる軽薄そうなギャル男。

プラチナの髪から覗く耳に、ウザイくらい付けたピアスが揺れていた。


「チッ、うっせー。ぶっ殺すぞチンピラ」

「どっちがチンピラ!?」


チンピラギャル男は、空缶片手にアタシの側まで来ると、ニコリと人懐っこい笑みを浮かべた。


こいつはタカナシ。

近くの私立大学で学生をしているらしいが、詳しくはよく知らない。


知り合って一年になるが、コイツとはここで、しかもごくたまにしか会わないからだ。