「ふぁ……終わった」


夕方。

日が傾きかけた頃、私は店を出た。

店を出ると途端に、この季節本来の寒さが私の体を打つ。

くそ、マジで冬とか意味わかんねー。

何の為にあるんだ?

あー早く春にならねーかな。


「ざみ゙ぃ……あ゙?」


不意に背後から、普段使っている傷んだマフラーが、誰かの手で巻き付けられた。


「忘れてたよ。お帰り、凪」

「……ただいま」


マイだった。

店長の妹で、私の同居人。

あの店長と同じ血が流れているせいか、見た目だけはやたらと美人だ。

フワフワの金髪に、うそ臭いくらいに人の良さそうな顔付き。

ま、頭の緩そうな顔っつってもいいかも。


「なぁ」

「んー、なぁに?」


フワフワの金髪を揺らしながら、鼻歌混じりに私にマフラーを巻き付けているマイ。

変な女。

いつだって、フワフワしてる。


「何で、ここにいンだよ」

「継人兄さんから連絡あったのよ」

「あー、あのシスコンか…」


余計な事を。


「帰って来る気になったんだね」

「あ?いつも帰ってンだろ」

「でも、私と会うの久し振りじゃない?」

「そりゃ、お前が寝るより遅く帰って、お前が起きるより早く出てるからな」


会わなくて当然だろう。