「おぉ、月笠。相変わらず早いな」

「ちす」


カウンターでレジを機動させていた男に、軽く会釈する。


見た目年齢二十代後半、実年齢は三十代半ば。

緩くパーマを当てた茶髪に、お洒落ぶった顎髭。

身長は百八十オーバーの巨体。

この見た目だけダンディーなおっさんが、我らがミセスドーナッツ空木ヶ丘駅東支店の店長だ。


容姿的には大人の色香漂う渋めの男だ。

あくまで、容姿に限った話。


ま、そんな言い方するからには、とんでもねー欠点がある訳で。


「お前は、今日も朝っぱらからクールだな」

「るせーな。つーか、いきなり手ェ伸ばしてんじゃねーよヒゲ」


さり気なさを装って、いや全然さりげなくないんだけど、胸に伸びて来た腕を叩き落として、冷め切った視線を向ける。


これだ。

このオープンにセクシュアルハラスメントを働いてくるのが、このおっさんの欠点。


「ついでに、ケチな所も変わらんな。揉んだからって減るモンでもないだろう」


何故か、私が逆に呆れられている。

幾ら何でも、人格が破綻しているとしか思えない反応だ。


「セクハラ親父にケチ呼ばわりされる覚えァねーっつの。つーか、減るんだよ。女のプライド的なもんがガッツリ減るんだよ」

「何?それは、初耳だぞ。お前に女のプライドなんてあったのか。そんなものはさっさと捨て去って、胸を揉ませろ」

「テメ……いい加減出るトコ出たっていいんだぞ」

「何を馬鹿な。お前は、出るとこ出てるじゃないか。特に、胸とかおっぱいとか乳房とか」

「うるせンだよヒゲ!!胸から離れろ!!」