「さみィ」


来たときから二人増えて、私達は夜の空木ヶ丘の駅前でたむろっていた。

さっきの支払い四人分は、タカナシがきっちり払った。

甲斐性のある男だよ、あいつは。


「ふーっ…」


行き交う車のライト。

街を彩る電飾。

ピンクの風俗の看板。

さまざまな明かりが、歪雑な街を夜の闇から浮かび上がらせている。


それで、きっと私達も浮いている。


不機嫌そうな女は煙草を吹かして。

チャラチャラした男は、携帯片手に音楽を聞いて。

喧しい双子は手を繋いで、キャンディーを舐めている。


奇妙奇天烈な取り合わせだ。

全く少しも周りの群衆に溶け込めていない。


「ったく……何が嬉しくてこんな面子なんだかな」

「いいじゃねーすかー。楽しいンだから、そ・れ・で。楽しいは正義っスよぉ」


タカナシがペロリと舌を出しておどけた。

その隣で、双子がウンウンと頷いている。


「安い奴らだな。こんなのが楽しいっつーのかよ」


三人から反応はなかった。

どうやら、私の呟きは喧騒に呑まれて、三人には届かなかったらしい。


「ち…」


真っ暗な空を見上げて、白い息を零す。


楽しい、か。

こんな風に顔見知りと座ってだべってるってさ、楽しいっていうのか?





分からない。



てゆーかさ、楽しいって何よ?


楽しいってどんな感じだっけ?


あぁ、分からない。

分からない事だらけで、頭が痛い。


あぁ。

私って、何かつまんねーな。





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