認めないっ!!

「なん、で…」

無意識のうちに俺の唇から零れた声は掠れていた。瞳はまだ彼を見ている。

彼は俺に気付かず、女の子だけを見つめている。彼女もまた優しげに彼を見つめていた。


「………っ」


例えば俺が女なら、彼は自分のものだと堂々と主張できたかもしれない。

しかし俺は男だ。ここで俺が出て行ったら彼女はどう思うだろうか。彼はどう思うだろうか。

そんな事容易に想像出来る。俺は堪らなくなり、その場から走り出した。

何故か、頭に浮かんだのは麻里亜の顔だった。


走り出してふと足が止まる。

今部屋に戻ったら麻里亜とその彼女に出くわすだろう。それはまずい。俺はくるりと踵を返すと街の方へ足を進めた。

そうだ、パスタを作るんだった。

パスタを頬張る麻里亜の姿を思い浮かべたら幾分か気分が軽くなった。

一緒にご飯を食べながら俺の失恋話を聞いてもらおう。そして麻里亜ののろけ話もいっぱい聞いてやろう。


俺は友達のありがたみを実感した。会って間もないのに、麻里亜は俺にとってかなり大きな存在になっていたのだった。