そして私は大切な
形見のマフラーを
木の枝にくくりつける。

きっとこの子は
私から姉の匂いを
嗅ぎとったのだろう。
そんな姉の存在に
心を募らせ、
そして私と同様に
悲哀にもその成長の足を
止めてしまった。

……違うぞ!
アヒルの子よ。
私と共に成長していこう。
前を向いて
いつかは誰よりも
立派な花を咲かせるんだ。

時間は掛かるかも
しれないけどさ。

握手をするように
木に片手を添えながら
空を見上げ
思いを吐き出すと
どこまでも
大きくなれる気がした。

そしてハジメさんに言う。

「はい、指輪。
さっきは助けてくれて
ありがとう。

妖怪にもいろんなのが
いるんだね。
触れ合うのも
悪くはないかも。」

「ああ。」

ぶっきらぼうに返事をする
この人も
嫌いじゃない。