子供は表情を
くずさなかったが、
その大事そうに抱える様を
うかがうと、どうやら
まんざらでもなさそうだ。

「今日はもう暗くなって
きたし、家に帰りな。
母ちゃんもさすがに
心配して坊主を
待ってるだろ。
もしまた何かされたら
おじさんがまた、
とびっきりのお菓子を用意
しとくからよ。な?」

そう笑いながら
子供の頭をなでた。

子供は一度うなづくと
背を向けて、夕闇の
住宅地をかけていった。


「さて。」

と、子供目線だった
おじさんは腰をあげて、
私を見る。

さっきまでの
優しい顔とは
うって変わって、
真面目な顔。

……う、なんか、
このおじさん、
……こわいかも。