オバケの駐在所

「わぁっ!」

あまりに俊敏に
左側の死角から
向かってきたので
思わず手で
払いのけるつもりが
勢い余って
肘で打ってしまった。

妙に感触がのこる
肉の柔らかさ。

そのぶつかってきた
者といえば
それを受けて
濁った悲鳴のような
鳴き声を出しながら
空中でひらりと
身を反転させ着地。
その姿、
見るとそれは
猫のようであった。

察するに左側の桜の木から
道路に
飛び降りたのだろうか。
しかしそれは一目みて
ただの猫ではないと
わかるほどの
酷たらしさ。

目を爛々と光らせている
小さな黒い頭部の上半分が
卵のごとく割れていて
赤みがかっている
くすんだ中身を
覗かせている。

気付くと腹が破けていたり
手足が千切れていたり
異様な猫が
周りに何匹も何匹も
溢れかえっていた。

「……えっ?
…ええ!?」

そして私はオバケ猫とは
また違う次元で
心底驚かされてしまう。