オバケの駐在所

その時、
バスの停車の
チャイムが鳴る。

ぼやけた意識が
叩かれたかのように
ハッと今に繋がり
辺りを見回してから
運転席の上にある
電光掲示板に目を移すと
『桜小路』と、
バス停の名前が
打たれていた。

……あっ、
降りなきゃ。

人やらなんやらを
真後ろから一気に
強引に掻き分けて
1人で下車すると
排煙をまき散らかしながら
発進したバスを
やり過ごし
道路を斜め横断して
家に向かって
歩を進めた。

交番へは
まだちょっと早いかな。
でも乗り越さないで
よかった。

腕にはめてある
カサブランカの時計を
覗きながら思う。

あれ?
そーいえば
降りたの私だけだよね。
……誰が下車ボタン
押したんだろ。