オバケの駐在所

私は交番を訪れる理由を
尋ねてみようかとも
思ったのだが、
あまり引き止めるのも
悪いと思い
返事だけして
送ってくれた礼を言い
その場を後にする。

アパートの階段を上り
ふと振り返ると
すでに彼女の姿はなく
花だけが明るく光を
纏っていた。

吉野さん大丈夫かな……。

綺麗なものは
何か引き寄せる力がある。
桜が咲くだけで
各地から宴だ花見だと
集まってくるくらいだし
そこに人もオバケも
関係ないのだろう。

家の扉を開け
部屋の窓から
いまだに咲かずの
八重桜を探した。

他の赤く豊麗とした
花びらがひしめく中、
伏せるようにして
その木はあったが
私はやはり気にかかるのだ。

咲いてほしいな。
せめて1つの蕾だけでも。