オバケの駐在所


ニューオーリンズの
酒場で生まれたような、
手を引かれるようなジャズが
リキュールの風味をとりたてて
強くしている気がする。

店内の抑え目の明かりが、
酒にあまり耐性のない
自分のすぐ赤くなる顔を、
ほどよく紛らわせて
くれるから、
つい長く居すぎてしまった。

「だから言ったでしょ?
せめて会社では
もう少しシャキッとしなさい」

俺は机に伏せて
胃をしゃくりあげながら
指を一本立てた。

「もう、飲みすぎよ。
マスター、
それは私に回して
彼には水をあげてね。
あとさくらんぼをちょーだい」

横に視線を向けると
グラスの中の一塊の氷が
薄いオレンジ色に
輝いていた。

小百合はバーの雰囲気に
馴染むように
ゆっくりと
まばたきをしている。

「完全に潰れてるわね。
そんなんだから、
後輩になめられるのよ。
今はみんな上司に
ゴマを擦ってても、
いつかは自分がって
機会を狙ってるんだから」

客は、カウンターにも
5席あるダイニングにも、
もう俺たちしかいない。
奥にあるBOX席でも
バーテンダーがすでに
くつろいでいた。

「なめられたって、
どんなに成績上げられたって、
俺が会社の
ソリューションなんだから、
やつらよりは
株価の変動くらい読めるわ」

「わかるわよ。
つまり自分が会社の顔だって
言いたいんでしょ?
ロクに酒も呑めないくせにね。
でもうちのアナリストが
こんなに情報も解析も
役に立たないなんてって、
嘆いていたわ。
仕方ないのよ、今はね」